インプラント周囲炎

21世紀に入り、失ってしまった歯を補う手段としてインプラント治療に科学的な裏付けがなされるようになって以来、世界の各メーカーから色々なケースに対応できるよう様々なインプラントが発売されるようになりました。今までは義歯でないと対応できなかった条件でもインプラントによる治療で歯を失う前の咬み合わせや見た目の回復ができるようになった一方で、近年取沙汰されている問題、それがインプラント周囲炎です。

健康な組織
健康な組織
歯周病(左)、インプラント周囲炎(右)
歯周病(左)、インプラント周囲炎(右)

インプラント周囲炎は歯に起こる歯周病と同じ病気でインプラント周囲の骨が破壊され、最悪の場合インプラント自体が抜けてしまうという恐ろしい病気です。

しかし、毎年参加するアメリカ、ヨーロッパの学会でもインプラント周囲炎に関する発表や報告はまだまだ少なく、まして日本国内ではあまり耳にすることもありません。

当クリニックでも以前よりインプラント周囲炎に関する研究を進めてまいりましたがすべての方のすべてのケースにおいて症状の改善が認めらるというものではなく今後も取り組んでいかなければならない課題だと考えております。

インプラントの形状、インプラントが埋め込まれる患者様の骨の形や密度、全身の状況などそれぞれバラバラでインプラント周囲炎が起こる原因はすべてが解明されている訳ではありません。しかしながら歯と同じような仕組みで病状が進行していくことから咬み合わせの力と細菌の感染が有力な原因と考えられています。

咬み合わせの力を受け止めるインプラントには歯にあるべき歯根膜(歯と骨の間にあるクッションの役割をする組織)が存在せず骨にダイレクトに力がかかってしまいます。

人が一日のうちで意識的に上下の歯を噛み合わせる時間は合計で20分程度ですが歯ぎしりやくいしばりが起こると自分の体重と同じくらいの力が連続して15分程度続くといわれています。この力を緩和するために必要になってくるのがナイトガード(歯ぎしり防止装置)で当クリニックではインプラント治療を行った患者様には推奨させていただいております。

また、他方で細菌感染によるインプラント周囲炎については歯周病の原因となるP.g.菌(Porphyromonas gingivalis)との関わりが強く疑われ、当クリニックにお越しのインプラント周囲に問題を抱える患者様からも歯周病細菌検査により同菌を多数検出しています。


P.g.菌

歯周病に準じた抗菌薬治療により改善が認められるケースから脱落を伴うケースまで様々ですが今後もインプラント周囲炎に関しては研究を進めてまいりたいと考えております。

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